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適格機関投資家等特例業務制度の概要

金商法には、投資者保護を主眼とする思想が貫かれています。よって、金融商品には包括的、横断的に規制の網をかけており、いわゆる集団投資スキーム持分は有価証券に含まれる(法2条2項5号・6号)ことになりました。

そしてこの集団投資スキーム持分の自己募集・私募は金融商品取引業に加えられ(法2条8項7号)、これを業として行うには原則として第二種金融商品取引業の登録をしなければなりません(法28条2項1号・29条)。また、これら集団投資スキーム持分から出資された金銭を主として有価証券やデリバティブ取引に投資する行為(自己運用業務)も、金融商品取引業に加えられ(法2条8項15号ハ)、投資運用業の登録が必要になっています(法28条4項3号・29条)。

金商法施行前はこのような特段の規制はありませんでしたので一気に厳格化に舵を切った形になりました。しかし、金融審議会報告(投資サービス法に向けて、平成17年)において、適格機関投資家向けの集団投資スキームを取り扱う業者については、あまりに規制を強化しては業務の効率化、円滑化、金融イノベーションの促進を阻害するとの指摘がありました。

そこで、「適格機関投資家等」を相手方として行う集団投資スキーム持分の私募と自己運用である場合には、「適格機関投資家等特例業務の届出」を行うことによって、例外的に第二種金融商品取引業と投資運用業の登録を適用除外にする(登録を不要とする)ことを可能としたのです(法63条第1項)。この適格機関投資家等特例業務の届出をした者(金融商品取引業者は除きます)は特例業務届出者と呼ばれます(法63条3項)。

適格機関投資家等特例業務届出者になると

特例業務届出者は、金融商品取引業者ではありませんので、金融商品取引業者に適用される金商法上の諸規制は原則として適用されません。広告等規制(法37条)や契約締結前交付書面の交付義務(法37条の3)等の行為規制も適用されません。
例外的に、最低限の規制として1.虚偽告知の禁止(法38条第1号)と2.損失補填等の禁止(法39条)といった取引の公正性等を確保するための規制のみが課されています(法 63条4項)。これらについては、金融商品取引業者等が適格機関投資家等特例業務を行う場合にも、原則として同様の取り扱いになっています。

但し、金融商品販売法(金販法)では集団投資スキーム持分を取得させる行為は、「金融商品の販売」(金販法2条1項5号)に該当します。たとえ自己募集について適格機関投資家等特例業務の届出を行い、特例業務届出者として金商法上の軽減措置が受けられる場合でも、金融商品販売法との関係では、金融商品販売業者として、原則どおり重要事項の説明義務(金販法3条)等を負います。特例業務届出者は、特定投資家である適格機関投資家にはリスク説明義務は負いませんが、一般投資家をプロ成り(特定投資家以外の投資家が特定投資家になる行為、法34条の3,4)させてリスク説明の責任を免れることはできません。したがって、特例業務届出者は、重要事項について説明を要しない旨の顧客の意思の表明(金販法3条7項2号)があった場合を除いて、すべての一般投資家に一定の重要事項を説明しなければなりません。更に、特例業務届出者も集団投資スキーム持分の取得勧誘を行おうとするときは、あらかじめ、勧誘方針を策定し公表する必要があります(金販法9条、金販法施行令12条)。

特例業務届出者は募集、運用をそれぞれ第二種金融商品取引業、投資運用業を持つ金融取引業者に依頼することができます(逆にいうとこれら金融取引業者以外に依頼することはできません)。例えば募集のみ第二種金融商品取引業者に依頼し、運用は特例業務で自己運用することも可能です。

また、特例業務届出者が適格機関投資家等特例業務でファンド運営を行いながら第二種金融商品取引業や投資運用業の登録手続きをすることも(登録要件を満たせば)可能です、まず簡単に組成できる特例業務で始め、実績ができる頃に登録が完了し、50人以上の一般投資家から募集・自己運用ができるようにもなれます。

適格機関投資家等とは

 

適格機関投資家等特例業務の対象となる行為は、

 

①「適格機関投資家等」のみ相手方とする集団投資スキーム持分の私募の自己募集・②「適格機関投資家等」のみから拠出された財産も自己運用

 

とされていますが適格機関投資家等といわれても何となくイメージしにくいと思います(金商法以外でまずお目にかかることはない用語ですので)。

「適格機関投資家等」の定義とは「1 名以上の適格機関投資家+49名以下の適格機関投資家以外の者」です。(法63条1項1号、施行令17条の12、1項、 2項)。
適格機関投資家等特例業務の要件を満たすための注意点として、平成19年7月31日のパブコメ回答(金融庁の考え方)で以下のように説明されています。

1)適格機関投資家は常に最低1名は必要で、実際に集団投資スキーム持分を取得している必要があります(取得の勧誘をしただけでは足りません。538頁)
2)適格機関投資家の出資割合は、基本的には問われません(法律上はいくらでもよいということになります)。(538頁) ただし、例えば1口100万円のファンドで適格機関投資家の出資が1万円だけとなると、制度を形骸化し悪用していると考えられても仕方がありませんので常識の範囲の出資は必要と思われます。
3)1名以上の適格機関投資家は、当該集団投資スキームの運営者以外にいなければなりません。すなわち、運営者自身が適格機関投資家で、それ以外の出資者がすべて一般投資家の場合は適格機関投資家等特例業務の要件を満たしません。

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